「もう美容師やめようかな」
そう思ったことが、私にも何度もありました。
技術の練習も勉強も好きなのに、現実はうまくいかない。
そんな時期を乗り越えた今、心から思うことがあります。
――この仕事を続けてきて、本当によかった。
今回は、私が美容師を続けてきて「やっていてよかった」と感じた瞬間、
そしてお客様との“忘れられないエピソード”をお話しします。
辞めたいと思っていたあの頃

私が本気で「美容師を辞めたい」と思ったのは、25歳くらいの頃。
スタイリストデビューして少し経った頃でした。
理由は単純。
給料が少なくて、将来が不安だったから。
当時の手取りは18万円ほど。
そこから税金・国保・家賃・ウィッグ代…。
手元に残るのは数万円。
休みは週1で、その休みも講習やセミナーで終わる日々。
「こんなに練習してるのに、生活が苦しい。」
「同級生たちは安定していて、ボーナスもある。」
心のどこかで、焦りや虚しさを感じていました。
それでも、
「絶対に稼げるようになってやる!」
この気持ちだけで踏ん張っていた。
練習は好きだったし、努力は裏切らないと信じてた。
でも現実はなかなか変わらない。
指名も伸びず、給料も上がらない。
そんな時、ふと気づいたんです。
**「この環境のままじゃ、上には行けない」**って。
周りには、上を目指している人がいない。
向上心がない環境にいたら、自分まで止まってしまう。
「お店を変えよう」
「もっと成長できる場所に行こう」
そう決意しました。
お客様の一言がすべてを変えた

転職を考えて悩んでいた時、あるお客様がこう言ってくれました。
「ねえ、知ってる? 自分の周りにいる5人の平均が自分なんだよ。
もし今の環境に満足してないなら、変えるのも必要だよ。」
その言葉にハッとしました。
たしかに、いつも同じメンバー、同じ愚痴、同じ生活。
考え方も、話す内容も、ほとんど変わらない。
**「類は友を呼ぶ」**という言葉の意味が、胸に突き刺さった。
「このままじゃ、自分も変われない。」
そう思って、本気で環境を変える決意をしました。
技術以上に大切なものに気づいた日

新しいサロンに転職してみると、そこはすごい人ばかり。
社保完備・給与高め・目標意識の高いスタッフたち。
「ここならきっと変われる!」と思って必死に練習した。
だけど、結果は意外でした。
技術も上がってるのに、指名が伸びない。
努力しても、なぜか数字につながらない。
そんな時、前のサロンでずっと担当していたお客様が、
新しいお店には一度も来ていないことに気づきました。
「なんで来てくれないんだろう…?」
そこで気づいたんです。
技術に追われるあまり、“人として寄り添う気持ち”を忘れていたことに。
ずっと通ってくれてたお客様に対して、
無意識のうちに“甘え”や“慢心”があったのかもしれない。
技術は努力で伸ばせる。
でも“心”は見失ったら、どれだけ上手くても伝わらない。
この出来事が、僕の中で大きな転機になりました。
美容師を続けることで得られる「信頼」と「絆」

その日を境に、僕の中で“仕事の意味”が変わりました。
お客様の「髪を切る」ではなく、
お客様の「気持ちを整える」ことを大切にしようと決めました。
- どんな悩みを抱えて来店されたのか
- どうなりたいと思っているのか
- 髪を通して、どんな毎日を過ごしてほしいのか
それを意識して接するようになったら、不思議と指名が増えた。
「あなたじゃないとダメなんです。」
「次もまたお願いしますね。」
そんな言葉をもらえるようになった。
それが、何よりも嬉しかった。
つながりが教えてくれた“仕事の意味”

技術はもちろん大事。
でも、それ以上に大切なのは“想い”。
自分がお客様を本気で想うから、
お客様にもそれが伝わって、信頼が生まれる。
そこから生まれる“絆”が、
美容師という仕事を特別なものにしてくれる。
美容師という仕事がくれた宝物

美容師は、人の人生に寄り添える仕事。
結婚式、成人式、就職、記念日…。
大切な瞬間に関わらせてもらえることが、本当に幸せです。
お客様との信頼や絆は、お金では買えない宝物。
もしあの時、美容師を辞めていたら、
今のこのつながりには出会えなかったと思う。
美容師を続けてよかった。
そう心から思えるのは、支えてくれた“人”がいたから。
これからも、そのつながりを大切にしながら、
一人ひとりの人生に寄り添える美容師でありたいです。

